新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、世界中で多くのイベントが中止・延期される中、県からの自粛要請を無視して強行開催された『K-1 WORLD GP』。
日本国内のみならず、世界中から大バッシングを浴びることとなったK-1ですが、奇しくも 『K-1 WORLD GP』 が開催された22日、K-1の初代王者であるブランコ・シカティック(65)が肺血栓症の悪化により亡くなりました。
一部では資金繰りの厳しさが指摘されているK-1ですが、シカティックが亡くなった今、K-1が産声を上げたばかりの当時の強烈なまでに熱すぎる熱気をシカティックの試合映像とともに想い返しましょう!
K-1 GRAND PRIX ’93 〜10万ドル争奪格闘技世界最強トーナメント〜
1993年4月30日に開催されたK-1の第1回大会。
階級も国籍も格闘ジャンルも別々の8名の選手による無差別級トーナメントです。
K-1の創設者は、極真空手の石井和義館長。
打撃系立ち技格闘技の世界一を決めるというコンセプトで立ち上げられました。
K-1の「K」は、空手、キックボクシング、カンフー、拳法などの立ち技格闘技の頭文字「K」、あるいは「格闘技」そのもの、そしてKINGの「K」を意味しています。
K-1の「1」は、ナンバーワンを意味しています。
このK-1第1回大会で優勝し、初代王者となったのがブランコ・シカティックです。
その他の出場選手には、ピーター・アーツ、アーネスト・ホースト、佐竹雅昭、モーリス・スミスなど、後のK-1で活躍する選手たちが参戦しています。
無名選手から初代王者、そして伝説へ
K-1 GRAND PRIX ’93に参戦した当時、ブランコ・シカティックは38歳と格闘家としては高齢で、さらには全くの無名選手でした。
どれくらい無名だったかというと、当時の公式資料に年齢が34歳と間違って記載されているのに誰も気づかず、実況も34歳と明言してしまうぐらい誰も知らない選手でした。
当然、当時の格闘技ファンの間でも、シカティックに期待する人はほとんどいない状態でしたが、まさかの3戦全KO勝利で優勝してしまいます。
しかも対戦相手は、ムエタイ最強のチャンプア・ゲッソンリット 、優勝候補筆頭の佐竹雅昭、そして決勝では後に4度の王者となるアーネスト・ホーストという強者ぞろい。
そのすべてをパンチによるKOで勝利し、その衝撃的なKOシーンも相まって『伝説の拳』と呼ばれるようになりました。
ちなみに、この時シカティックがリング上で掲げたクロアチア国旗は、国際的なスポーツのイベントで初めて掲げられたクロアチア国旗となりました。
そのため、クロアチアではシカティックは国民的な英雄として知らない人がいないほどの超有名人です。
決勝戦シカティックvsホースト↓
数々の伝説を残し引退
1994年12月10日、優勝の翌年に『K-1 LEGEND 乱』で引退試合を行います。
引退の理由は、年齢による衰えなどではなく、自身の出身国であるクロアチアの独立戦争に参加するためです。
対戦相手はK-1 GRAND PRIX ’93決勝以来の再戦となる、アーネスト・ホースト。
またもや衝撃的なKO勝利で引退を飾りました。
この試合は、シカティック自身が生涯ベストバウトに挙げるほどの名勝負となりました。
K-1 LEGEND 乱 シカティックvsホースト↓
1997年に現役復帰。
40歳を超えたシカティックは、ムサシ(現・武蔵)、サム・グレコ、マイク・ベルナルドなどのK-1トップファイター達と激しい死闘を繰り広げます。
今でも語り継がれる、立ったまま失神するブランコ・シカティック(vsサム・グレコ)↓
その後は、PRIDEのリングに上がり2005年の試合を最後に日本でリングに上がることはありませんでした。
引退後
引退後は、母国クロアチアで警備会社『タイガー・シカティック』を設立し、クロアチアの要人の警備などを行っていました。
格闘技の指導も行っており、自身の弟子であるアントニオ・プラチバットは、2017年11月に新生K-1の『K-1 WORLD GP初代ヘビー級王座決定トーナメント』で優勝。
師弟揃ってのK-1ヘビー級王者となりました。
2018年に肺塞栓症と敗血症のため入院、さらにパーキンソン病も併発しました。
ここ2年は家族の看病のもと自宅で闘病生活を送っていましたが、2020年3月22日最期は家族に看取られながらその生涯に幕を閉じました。
あの熱い時代をもう一度!
ブランコ・シカティックの経歴を振り返りつつ、当時のK-1の熱を想い返してきました。
『K-1 WORLD GP』の強行開催で、K-1を取り巻く環境はこれからどんどん厳しくなってしまうかもしれません。
観戦者が発熱を訴えたとの報道がされたため、さらなるバッシングが巻き起こることでしょう。
今は格闘技を楽しめる環境にないのかもしれませんが、シカティックが活躍していた当時のような熱い熱気が渦巻く中、純粋に格闘技を楽しめる日がまた来る時を待つしかありません。
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