日本のアニメ映画『人狼 JIN-ROH』を観ました。
監督は沖浦啓之監督ですが、原作・脚本押井守なので、一応押井守作品ということでいいんですよね?
押井守といえば、『攻殻機動隊』『機動警察パトレイバー』『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』などの作品を作った、日本を代表する映画監督・アニメーション作家。
と偉そうに言ってみたものの、僕自身は、攻殻機動隊もビューティフル・ドリーマーも観たことないぐらいにアニメには相当疎いです。
押井守作品では、パトレイバーだけは大好きで実写ドラマも含めて全シリーズ観ましたが(きっかけはパチンコCR機動警察パトレイバーにハマったから)、それも5~6年前なので記憶はかなり曖昧です。
ちなみにパトレイバー初代主題歌『未来派Lovers』がたまらなく好き。↓
そんなアニメに疎い僕が「人狼」を観て、どう評価していいのか何とも判断に困ったので、詳しくないなりに雑にそして率直に感想を書いておすすめしたいと思います。
映画の概要
押井守原作の漫画「犬狼伝説」の映画化で、押井監督が手がけた実写映画「紅い眼鏡 The Red Spectacles」「ケルベロス 地獄の番犬」と同じ「ケルベロス・サーガ」に連なる一作。架空の昭和30年代を舞台に、特殊部隊のエリート隊員とゲリラ組織の少女の愛憎と悲恋を描く。敗戦後の混迷からようやく抜け出し始めた日本の首都圏では、激化する武装闘争に対応するため「首都圏治安警察機構」=通称「首都警」が組織されていた。首都警の戦闘部隊「特機隊」に所属する伏一貴は、過激派集団の暴動を鎮圧するため出動した先で、爆弾の運搬役の少女と遭遇。引き金を引くことをためらった一瞬の隙に、少女は自ら爆弾を爆発させ自殺してしまう。任務を遂行できなかった伏は、訓練学校に戻り再訓練を命じられるが、そんなある日、自爆した少女とそっくりの女性に出会い……。「AKIRA」や「機動警察パトレイバー」の原画も手がけてきたアニメーターの沖浦啓之が初監督を務め、ベルリン国際映画祭などに出品され高い評価を受けた。
1999年製作/98分/PG12/日本
引用元:映画.com
配給:バンダイビジュアル、メディアボックス
監督:沖浦啓之
脚本:押井守
声優:藤木義勝、武藤寿美、仙台エリ、木下浩之、廣田行生、吉田幸紘、堀部隆一、中川謙二、坂口芳貞、大木民夫
予告編はこちら↓
個人的評価:50点
ザックリ感想(この先ネタバレ注意!)
『人狼 JIN-ROH』を観た僕の感想をザックリ書いていきますが、この先ネタバレにも触れるので何も情報を入れずに映画を観たいという方は、まず先に映画を観てから読んでください!
ケルベロス・サーガの1作
なんでそもそもアニメに詳しくない僕が20年も前のアニメ映画を今さら観たのかというと(2000年がもう20年前とは・・・)、Netflixで配信されている韓国映画『人狼』を観ようと思ったらどうやら日本のアニメ映画の実写リメイクらしいと知って、「じゃあ先にアニメの方を観とくか」ということで観たのです。
しかも、原作・脚本が押井守と聞いて、人の映画評論を聞いたり読んだりするのが趣味の僕は「そういえば誰かの押井守評で『人狼』ってワードは何回か聞いたことがあった気がするし、たぶん有名な映画なんだろうなぁ」ぐらいの薄っぺらい前情報だけを持って映画を観ました。
映画を観た後いろいろ調べて分かったことですが、この映画は押井守の代表作『ケルベロス・サーガ』の3作目にあたる作品とのこと。
なので前2作を観ずにこの作品単体だけで語るのは違うかもしれませんが、知らずに観てしまったんだからしょうがないじゃないかぁ!ということで、この映画単体で観た僕の感想を書いていきます。
いずれ前2作も観て必ずそれも踏まえた感想も書きます!多分!
淡々と語られる『人狼 JIN-ROH』の世界設定
映画冒頭、『人狼 JIN-ROH』の世界設定が淡々と、そしてなかなかの勢いでまあまあ長い時間語られます。
何の心構えもせずにぼーっと観始めた僕にはこの世界設定説明、1回では何一つ飲み込めませんでした。
しかも何やら重要なことを言っている風な感じだったので、メモを取りながら3回ぐらいオープニングリピートしてようやく理解できました。
第二次世界大戦で敗戦国となった日本がドイツ軍に占領されるという架空の世界設定で、『人狼 JIN-ROH』はその世界の中の昭和37年日本が舞台となります。
雑に映画の大筋を説明すると、戦後、再び国際社会に復帰したい日本政府は強引な経済政策を強行。
それに反発する市民の間で結成された反政府過激派ゲリラグループ「セクト」と、治安維持のために結成された警察組織、通称「首都警」との武力衝突が激化。
メインとなる話は首都警の中でも戦闘に特化した部隊「特機隊」に所属する伏一貴と、セクトの物資運搬係「赤ずきん」の元メンバー・雨宮圭を中心とした愛憎と悲恋の物語。
そして都市伝説として噂される、首都警の中に存在するという謎の組織「人狼」とは一体何か・・・。
みたいな話です。
赤ずきんメタファー
映画の中では、繰り返し童話『赤ずきん』の物語が語られます。
反政府ゲリラ「セクト」の物資運搬係の名前がもろに「赤ずきん」であったり、映画に出てくる少女2人が赤いフードの服を着ていたり、左翼のことを「アカ」と呼ぶことから、反体制側が赤ずきん。
そして主人公・伏がやたらと獣に例えられたり、はく製が展示されている博物館でわざわざご丁寧に狼のはく製の前に何度も立っていたり、謎の組織の名前が「人狼」であることから、体制側が狼。
といった感じで、映画全体がめちゃくちゃわかりやすく赤ずきんの物語がメタファーになっています。
この映画は押井守版「赤ずきん」であると言えます。(よく分かってないけど分かってる風にテキトーに言ってます)
強化装甲スーツはかっこいいんだけど・・・
特機隊が着ている強化装甲スーツ(呼び名が分かりません)は、無骨で不気味で超かっこいいです。

目が不気味に赤く光る感じは、体制側なのに(だからか?)明らかに悪者にしか見えません。
で、強化装甲スーツは超かっこいいんだけど、一番重要な部分でどうしても納得いかないことが・・・。
それは、主人公・伏が実は「人狼」であることが明かされた後の展開。
ここまでに何度も「人狼」の話が出てきて、「それはもう特殊な技能を持った殺人マシーン集団に違いない!」と僕は期待しまくっていました。
ところが、「人狼」となった伏はおもむろに強化装甲スーツ(特機隊のものとは別物なの?)を着せられると、公安の人たちが乱射する銃弾のなか全くダメージを受けずに突き進み、そして重機関銃で皆殺しにしていきます。
これ、強化装甲スーツがただただ最強なだけであって、中身は誰でもいいんじゃないの?と感じてしまいました。
「人狼」のリーダー塔部が「我々は犬の皮を被った人間じゃない、人の皮を被った・・・狼なのさ」と、まさに決め台詞のようにかっこつけて言っていましたが、これだとどこからどう見ても「狼の皮を被った人間」にしか見えないんですけど・・・。
総評
ということで、感想というよりはほとんどあらすじ紹介しただけみたいになってしまいましたが、総評としては「面白くないわけじゃないけど、めちゃくちゃ面白いわけでもない。」といった微妙な感じになってしまいました。
なにより一番楽しみにしていた特殊殺戮マシーン集団「人狼」が、思っていたのと全然違っていてガッカリしたことで著しく映画の印象が悪くなってしまいました。
でも悪いところばかりではなく、印象に残るシーンもありました。
伏と圭が公園で、近所の更地に何が建っていたか全然覚えていないと話すシーン。
「初めから記憶なんて無いのかも。1日経てば初めから無いのと同じ。人間だって同じようなものよ。」
からの、終盤、「人狼」であることが判明した伏に向かって圭が、
「誰かに覚えていて欲しかったの!」
と慟哭するシーンは胸に突き刺さるし、なかなか忘れがたいシーンでした。
そう書いているうちに、なんだかいい映画だったような気もしてきます。
アニメに疎い僕が偉そうに語ってしまい、すみませんでした。
まだ観ていないという人は、ぜひ自分の目で観て面白いかどうか判断してください!
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