【ネタバレあり】映画『凪待ち』感想|香取慎吾主演作をギャンブル依存症目線で観ると…

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凪待ち郁男 映画感想
(C)2018「凪待ち」FILM PARTNERS
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今さらですが、白石和彌監督・香取慎吾主演の映画『凪待ち』を観たので自分なりの感想を書こうと思います。

ちなみにこれを書いている僕は、映画大好きかつギャンブル依存症(自覚アリ)なので多少なりともこの映画に通ずるものはあると思いますので、ギャンブル依存症目線から観た『凪待ち』の感想を書いていきます。

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映画の概要

「孤狼の血」の白石和彌監督が、香取慎吾を主演に迎えて描くヒューマンサスペンス。「クライマーズ・ハイ」の加藤正人が脚本を手がけ、人生につまずき落ちぶれた男の喪失と再生を描く。無為な毎日を送っていた木野本郁男は、ギャンブルから足を洗い、恋人・亜弓と彼女の娘・美波とともに亜弓の故郷である石巻に移り住むことに。亜弓の父・勝美は末期がんに冒されながらも漁師を続けており、近所に住む小野寺が世話を焼いていた。人懐っこい小野寺に誘われて飲みに出かけた郁男は、泥酔している中学教師・村上と出会う。彼は亜弓の元夫で、美波の父親だった。ある日、美波は亜弓と衝突して家を飛び出す。亜弓は夜になっても帰って来ない美波を心配してパニックに陥り、激しく罵られた郁男は彼女を車から降ろしてひとりで捜すよう突き放す。その夜遅く、亜弓は遺体となって発見され……。「くちびるに歌を」の恒松祐里が美波、「ナビィの恋」の西田尚美が亜弓、「万引き家族」のリリー・フランキーが小野寺を演じる。

2019年製作/124分/PG12/日本
配給:キノフィルムズ

引用元:映画.COM

監督:白石和彌
脚本:加藤正人

出演:香取慎吾、恒松祐里、西田尚美、吉澤健、音尾琢真、リリー・フランキー、三浦誠己、寺十吾、佐久本宝、田中隆三、黒田大輔、鹿野浩明、奥野瑛太、麿赤兒、不破万作、宮崎吐夢、沖原一生、江井エステファニー、ウダタカキ、野中隆光、岡本智礼、本木幸世

予告編はこちら↓

個人的評価:80点

ザックリ感想(この先ネタバレ注意!)

映画を観た僕の個人的な感想をザックリ適当に書いていきますが、この先がっつりネタバレに触れるのでまだ観ていなくて何も情報を入れたくないという方は映画を観てから読んでください!

ザックリあらすじ&感想

ということで、ザックリあらすじと感想です。

川崎→石巻

主人公・木野本郁男(香取慎吾)は、競輪狂いでろくに定職にも就かないダメ男。

映画冒頭は同僚のナベさん(宮崎吐夢と一緒に競輪場のシーン。

とにかくこのナベさんがまず最高
映画の最初と最後にしか出てこないんだけど、いろんな意味で強烈な印象を残してくれます。
「え~イクちゃんと競輪いくのだけが楽しみだったのに~」「俺たちギャンブル依存症だったんじゃないの~」などの数々の名言を残してくれました。

郁男は川崎で、彼女の亜弓(西田尚美)とその娘・美波(恒松祐里)と3人暮らし。
郁男はギャンブルから足を洗い、亜弓の実家がある石巻へ3人で移り住むことに。

引越しの際に、引越し業者を待たせてモンハンをやる郁男と美波のシーンも秀逸。
特に説明もなく、2人の信頼感と社会的にはどうかしちゃってる感じがこのシーンを観るだけで分かります。

そして舞台は石巻へ。

近所に住む超お人よしのオッサン・小野寺(リリー・フランキー)に紹介してもらった地元の印刷会社に就職する郁男。
亜弓の実家で一緒に住むことになる父・勝美(吉澤健)が末期がんであることが発覚したり、郁男は勝美に全く無視され続けたりするものの何だかんだ平穏な日々が始まるのですが…

ひょんなことから印刷会社の同僚・尾形(黒田大輔)たちに誘われてノミ屋に足を踏み入れてしまう郁男。
足を洗ったはずのギャンブルの世界に速攻舞い戻ってしまい、それはそれで幸せそうな郁男。

ちなににこの同僚の尾形の弁当の食い方のキッタナイこと!笑
後々も出てくるけど、この尾形もまた最高なんです。

最悪のケンカ別れ

3人の食事シーン
(C)2018「凪待ち」FILM PARTNERS

そんなこんなで石巻での生活にも慣れてきたある日、亜弓と美波が喧嘩をして美波が家を飛び出していってしまいます。
夜になっても帰ってこない美波を探しに行く亜弓と郁男。
車内で激しい口論になった末、「車から降りろ!」とブチ切れて亜弓を降ろしてしまう郁男。

キレて「車から降りろ」はほんと最悪。やったこともされたこともないんだけど。

あと、亜弓が郁男の会社に行ったときに同僚が「川崎のミッドナイト買っといたよー」と言われてからの車内での口論中に「私に隠れてこそこそギャンブルやってるんじゃないわよ!」と言われるところも辛すぎる。
それとこれとは関係ないだろぉ!」と一応デカい声は出すものの、そこを突かれたらもはや攻撃力が0になってしまう郁男
情けなすぎるし、気持ちが分かりすぎて胸が痛い…。

その後、郁男は美波を見つけるも、今度は車から降ろした亜弓が他殺体となって発見されるという最悪すぎる展開に。

転がり落ちてく郁男の人生

「自分のせいでお母さんは死んだ」と悩む美波に、「いや、実は俺が…」と車から降ろしたことを白状した途端に「サイッテー」と罵られる郁男。

警察からも犯人扱いされたり、会社でも同僚・尾形にあることないこと告げ口されてブチ切れて大暴れからのクビと、ここから郁男の転落が加速度を増してきます

当面のお金をということで小野寺からもらったお金で競輪→全部スッてノミ屋で金借りて競輪→全部スッて借金返済できないことに気づいた勝美が大事な船売って作ったお金で借金返済残った50万でまた競輪→やっと当てるもノミ屋に配当金払ってもらえず逆にボコられる

もう最悪です。

この辺りで一番良かったのは同僚・尾形でしょう。
逃げながら吐きながら謝りながら金払うというウルトラC級のアクロバティックな演技を見せてくれます。
こんな斬新なシーン観たことない!

ノミ屋の穀田を追いかける天気雨のシーンも、なぜかあそこだけ幻想的で印象に残りました。あの天気雨は何か意味があるのか?

あと死んだ亜弓のヘソクリに手を出すシーンも最悪でした。
夜道を歩きながら「俺はクソだ」と吐き捨てる郁男、自分の姿を観ているようで本当に辛い。

殺したのは…

郁男と小野寺
(C)2018「凪待ち」FILM PARTNERS

自暴自棄になった郁男は、酒に酔って祭りで大暴れ。

このシーンも大好き。
映画全体通してそうだけど、図体デカいだけの不器用、最低のクズ野郎で陰鬱としてるのにどこか愛嬌もあるという絶妙なバランスを体現できるのは、香取慎吾以外いなかったと思います。

地元のヤンキーにボコボコにされ「俺なんて死んだほうがマシだ!」と喚く郁男に、「今アンタここで死んだ!もっぺん生まれ変わってやり直そう!」と抱擁する小野寺。

小野寺どこまでイイ人なんだ!そしてどんなダメな奴にも、ちゃんと支えてくれる人がいればやり直せるという何とも優しいメッセージを受け止めて号泣してしまいました。

郁男は小野寺と一緒に市場の氷屋で働き始め、ここから立ち直っていくのかと思いきや…

小野寺逮捕!亜弓を殺したのは小野寺だったのです。

勘の良い人なら「なんか怪しい」と薄々気づいていたと思いますが(小野寺というよりリリー・フランキーが怪しい)、祭りでの超いいシーンを見せられた直後だっただけにショックも大きい。

思い返せば、郁男と亜弓が海外の海について話す幸せなシーンが突然ぶった切られて次のシーンに出てくるのは小野寺(←ライムスター宇多丸さんが映画評で指摘)、 亜弓が美容室開業準備中にお祝いに来てあきらかに様子が変な小野寺、クッキーに蝿がたかるあの厭なシーンで喋っているのは小野寺

始めからちゃんと怪しい奴として描かれていたんですね。

郁男・美波・勝美の3人での生活が始まる

勝美に「3人で暮らそう」と提案されるも、「俺は疫病神だから」と手紙を残して立ち去る郁男。
駅のホームで、あの元同僚・ナベさんが会社をクビになった逆恨みで金属バットを持って暴れて逮捕というニュースを観て触発される。
その足でノミ屋に向かい大暴れ、あっさりヤクザに拉致られ半殺しに。

組事務所で、組長(麿赤児)のタブレットに写る孫の写真を見て子分(奥野瑛太)が「かわいいっす。かわいいっす。かわいいっす。」と連呼するとこで爆笑。

昔、組長の命を救った恩がある勝美が郁男を救出。

郁男、美波、勝美の3人で歩き出すシーンは本当にいいシーン。

その後、亜弓が残した婚姻届けに郁男がサイン→婚姻届けを海に流し、3人の「家族」としての生活が始まるのでした。

そしてエンドロールは石巻の海の底。
最後までいろいろと考えさせられるエンドロールでした。

総評

3人事件現場で
(C)2018「凪待ち」FILM PARTNERS

とにかくギャンブルを愛する僕にとっては、観ていてあまりにも辛すぎる最高の映画でした。

何が観ていて辛かったのかというと、主人公・郁男のありえない行動の数々が、僕自身に身に覚えがありすぎて超気まずくなっていたたまれない気持ちでずっと映画を観ていたことです。

郁男は誰が見てもただのクズ野郎なんだけど…

絶対に使っちゃいけないお金でギャンブルしたこと僕もあるんです…

多分ギャンブル好きな人は、少なからずそういう経験をしたことがある人もいるのではないのでしょうか。

これ以上は絶対ダメ!ってわかってるのに財布に入ってるお金を全部使って、さらにはATMに走って資金調達…こんなの1度や2度じゃないですよ。

そんでどんどん深みにハマっていってまともな判断ができなくなっていくあの感覚は、この映画で印象的に使われていたカメラがゆっくり傾いていく演出で見事に表現されていたと思います。

幸いにも今はギャンブルとはほどほどの距離で付き合うことができてる僕ですが、「ひとつ間違ってたら俺もこうなってたのかも」とか「今後の人生だってどうなるか分からない」と考えてしまい、郁男やナベさんや尾形がとても他人とは思えず、深く深く深く考えさせられる忘れがたい映画となりました。

もちろん、主演の香取慎吾の演技の凄まじさがあってこそ成り立つ映画だと思うし、「なんか舐めててすいませんでした!」と本気で謝りたい気持ちでいっぱいになりました。
これ主演男優賞とか取ってもおかしくないと思って調べたら、賞レースは香取慎吾全く無視だったみたいですね…日本アカデミー賞よ!!!

その他にも、亜弓の元夫役の人(音尾琢真)とかのいや~な感じとかも最高だったし、とにかく登場人物全員魅力的でした!

Blu-ray・DVD出てるし、U-NEXTでも観れますよ!

3月3日にBlu-rayとDVD出ているので、まだ観ていない人やメイキング映像みたい人は是非!

U-NEXTでも配信されてますよ!



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